牧師 の書斎より その15『病み上がり同士』
   
 

 私の書斎の本棚には妙な本があります。「図説寄生虫学」「解剖学カラーアトラス」
表紙を見ただけでぞっとします。しかし,そんな医学書の中でも牧師が唯一開きたくなるのが 心の病について書かれてある本です。そこには様々な病について記されています。そして,こ れらの本を読むときに,私は心の中でいつも同じ感想を抱きます。「このような病の人たちの ことを多くの人たちは病人とは思っていないのではないだろうか。ほとんどの場合,このよう な病にある人たちのことを多くの人は『変な人』と思っているのではないだろうか。考えてみ るとこれはひどく悲しく愚かな人間観ではないだろうか」このような感想です。

最近,発達障害という言葉がいろいろなところで聞かれるようになってきましたが,一言で 発達障害といっても実に沢山の発達障害があるようです。この発達障害についての記述を読む につれ,私は三つのことについて新しい認識を持つようになりました。その第一は,人が10 0人いればその100人全員が,実は(強弱はあるにしても)何らかの発達障害という人間性 を抱えているということです。第二は,この発達障害のために人間関係を悪化させてしまう 人が余りに多いということです。第三は,もし自分の障害を認識していたら,その人は社会生 活のうえでそれほど苦しまなくてもよいということです。

次ような出来事を私たちは一般社会の中でよく見るのではないでしょうか。
Aさんがaという意見を述べます。Aさんは自分の意見が正しいと思うからこそaという意見を 述べたのです。しかし,折角述べた自分の意見は,結局理解されず,聞きとめられず,採用さ れませんでした。この世の常識では,このAさん。この後,どのような気持ちになってゆくの でしょう・・。 誰もが発達障害を抱えています。ですから,大なり小なり次のような怒りが 心に生じてゆく可能性があります。正しい意見であるaがなぜ排除されなければならないのか, 納得がいかない。自分の意見であるaが受け入れられないということは,自分が大事にされてい ないということではないか。自分の意見が否定されたということは,自分自身の存在が否定さ れたということではないか。

聖書は,このようなパターンに必ずはまってしまう人を「古き人」「肉なる人」と言ってい ます。と同時に,「あなたがたは新しくなったのです!」と,私たちキリスト者に向かって語 られています。これは,「あなたがたは古き人間性を抱えてはいる,しかし,同時に,新しく されていることをしっかりと覚えておきなさい。あなたがたはかつて肉の奴隷でした。しかし, 今はその肉のパターンに必ずはまってしまう,奴隷ではないのです。あなたを愛してやまない 主から目を離さないようにしましょう!そして,主の御業に用いられてゆきましょう!」この ような熱いメッセージです。私たちは,かつて同じ病の中にいた者同士なのです。ですから, 病が再発しないように,これからもお互い支え合いつつ歩んでいこうではありませんか。 ローマ7章〜8章 Tコリント5:17


牧師:北澤正明